教えるとき、言葉を、たくさん使ってはいけません。
これは、15年、占いや美容の技術を教えてきて、私が強く感じていることです。
熱心な先生ほど、言葉の量が、多い。
でも、言葉の量と、伝わる量は、正比例しません。
むしろ、逆のこともあります。
言葉を詰め込むと、生徒は、疲れる。
熱い先生が、1時間の授業で、何千文字分の言葉を、発する。
初心者を育てる意気込みで、あらゆる角度から、知識を、伝える。
生徒は、一生懸命、メモを取る。
ですが、授業が終わったときに、生徒の中に、何が残っているか。
意外と、ぼんやりしています。
膨大な情報を、短時間に詰め込まれた頭は、処理が追いつかない。
メモを見返しても、自分が何を書いたのか、半分くらいしか、理解できない。
結果、1回の授業で得るものは、1〜2個にまで、しぼむ。
先生が100個伝えたつもりでも、生徒が持ち帰るのは、数個。
言葉の間の、沈黙。
教える側が、気をつけるべきは、言葉の量より、言葉の間の「沈黙」です。
先生が1つ何かを言ったあとに、沈黙を、3秒、置く。
その沈黙の間に、生徒の頭の中で、理解が、組み立てられていく。
言葉と言葉の間に、沈黙がないと、理解の芽が育たない。
先生が次々と話を繋ぐと、生徒は、その流れについていくのに必死で、自分の頭で考える余地が、なくなる。
言葉を、少なくする。
沈黙を、多めに、置く。
これが、生徒の思考を、育てる教え方。
短い言葉を、選ぶ。
言葉を少なくするためには、短い言葉を、選ぶ必要があります。
「このカードは、〇〇を意味するんですが、場合によっては△△という読み方もできて、そのときは周りのカードが××だったら、こういう風に読むわけで……」
これは、長い言葉。
同じ内容を、短く、切り分けて、
「このカードの、基本は、〇〇」
「でも、△△の時もある」
「周りが××なら、そっちを読む」
3つの短い言葉に、分ける。
1つ1つの言葉の間に、沈黙を、挟む。
そうすると、生徒の頭の中で、1つ1つが、静かに、定着していきます。
質問される時間を、大事にする。
先生が話しすぎると、もうひとつ、失われるものがあります。
生徒の、質問する時間。
先生が絶えず話している授業では、生徒が口を挟む隙間が、ない。
「分からないまま、進む」ということが、起きる。
1時間の授業で、生徒が発言できるのが1〜2回だけ、という授業は、良くない授業です。
生徒が、5〜10回、発言する授業。
質問する、考えを述べる、先生の話を要約する、別の角度から聞き返す。
こういう機会が、何度もある授業が、いちばん、血肉になる。
先生は、話すよりも、「話させる」ほうが、役目が大きい。
短い言葉に、経験を、乗せる。
短い言葉を使うのは、簡単ではありません。
難しい内容を、一言で、的確に伝える技術が、要ります。
そのためには、教える側が、伝えたい内容を、完全に理解している必要がある。
自分でも半分しか分かっていないことは、長い言葉でしか、説明できない。
短くまとめるには、自分の中で、情報を、しっかり、整理する必要がある。
だから、「言葉を少なくすること」は、「自分の理解を深めること」と、同じ作業です。
言葉を絞る訓練は、自分の技術を、磨く訓練でもある。
先生が、静かに、なる。
熟練した先生ほど、静かです。
口数が、少ない。
でも、発する一言一言が、重い。
生徒は、その少ない言葉を、じっと、受け止める。
50年教えてきた先生の、たった一言が、生徒の人生を、変える。
若い先生が、熱心に1時間話した内容より、深く、届く。
言葉数は、年を重ねるほど、自然に、減っていく。
これが、教える仕事の、成熟の形。
自分の授業を、録音してみる。
教える立場の方に、ひとつだけ、試してみてほしいことがあります。
自分の授業を、1回だけ、録音してみる。
後日、聴き直す。
多くの先生が、ショックを受けます。
「私、こんなにずっと喋ってたの」と。
授業の中の90%が、先生の声で、埋まっている。生徒の声は、10%にも満たない。
理想は、6:4 くらい。先生が6、生徒が4の発話量。
ベテランになると、5:5に近づく。
この比率に近づくほど、生徒の成長スピードは、上がります。
少ない言葉は、愛情の濃度。
少ない言葉で教える先生は、冷たく見えるかもしれません。
でも、実は、深い愛情を持っている先生ほど、言葉を、絞ります。
生徒の理解の速度を、大事にしている。
生徒の考える時間を、奪いたくない。
生徒が自分で発見する喜びを、残したい。
これは、静かな、けれど、深い愛情。
次に教える場面が来たら、いつもより、少ない言葉で、伝えてみてください。
そして、あなたが黙った後の、生徒の顔を、じっと見てみてください。
そこに、育っていく目があります。
