誰にも言ったことがない、占い師になる前の話。

占い師になる前の私のことを、あまり、話してきませんでした。

鑑定のお客様にも、教え子にも、出版社の編集者にも、ヘアメイクのお客様にも、あまり、話さない。

「占い15年です」とだけ、言って、済ませている。

でも、占い師になる前にも、私には、15年以上の、別の人生が、ある。

今日は、そのことを、少しだけ、書きます。

目次

ごく、普通の少女でした。

占い師になる前の私は、特別な子ではありません。

「子どもの頃から視えていた」とか、「家系に占い師がいた」とか、そういうドラマチックな出自は、ありません。

普通の公立小学校、普通の公立中学、普通の公立高校。

勉強は、まあまあできるほう。

運動は、苦手。

絵を描くのと、本を読むのが、好きでした。

学校ではそこそこ目立ち、放課後は静かに本を読み、週末は家で絵を描く。

どこにでもいる、ちょっと陰と陽を持った、普通の少女。

はじめて、タロットに触れた日。

タロットカードに出会ったのは、中学生のとき。

親戚のお姉さんの部屋で、机の上に、ぽつんと、置いてあった。

「触っていい?」と聞いたら、「いいよ」と返ってきた。

箱から出して、絵柄を、1枚ずつ、眺めた。

意味は、まだ、分からなかった。

でも、絵柄が、きれいだった。

月、太陽、皇帝、恋人、死神。

その絵の1枚1枚に、物語がある、と、直感的に、感じた。

たぶん、その日が、私の、占いの始まり。

でも、すぐ占い師にはならない。

タロットに惹かれたから、そのまま占い師の道に進んだ、という単純な話ではありません。

中学生の私は、占い師なんて仕事、まともな職業として、考えていなかった。

高校を出て、専門学校に進み、ヘアメイクの勉強をしました。

20代は、現場で、撮影やショーや結婚式のヘアメイクをしていた。

タロットは、趣味として、ずっと続けていましたが、お金を取るなんて、考えもしなかった。

ヘアメイクの仕事は、楽しかった。

お客様が笑顔になって帰っていくのが、嬉しかった。

20代の私は、この仕事を一生続けるんだろうな、と、思っていました。

転機は、ある結婚式。

20代後半、ある結婚式のヘアメイクをしていたときのこと。

花嫁さんが、鏡の前で、ぽつりと、言いました。

「今日、結婚するのが、怖い。」

これから式が始まる直前。

私はヘアメイクを止めて、その方の目を、見ました。

「ちょっと、カード、引かせてもらっていい?」

当日持っていたタロットデッキを、化粧ポーチから出して、3枚、引いた。

私はカードを見て、その方に、3分だけ、話しました。

花嫁さんは、泣きはしなかった。

でも、息を、深く、吐いた。

「ありがとう。行ける気がする。」

その日の式は、きれいに、進みました。

その夜、考えた。

式を終えて家に帰った夜、私は、ベッドの中で、ずっと考えていました。

ヘアメイクで、顔を美しく整える仕事も、大事。

でも、その方の中にある「怖さ」を、ほんの3分、カードを通して、整えた時間。

あの時間のほうが、私には、もっと、ぐっと、深く、沁みた。

ヘアメイクは、外側の美しさ。

占いは、内側の落ち着き。

両方とも、人を整える仕事。

私は、両方を、やりたい、と、思った。

それから、占いを、趣味から、仕事へと、少しずつ、切り替えていきました。

プロ占い師への、長い道のり。

占いを仕事にすると決めてから、実際にお金を受け取るようになるまでに、1年以上かかりました。

最初は、知人のツテで、少しずつ、友人の友人に、有料鑑定を受けてもらった。

3,000円から始めて、5,000円、1万円、3万円、と、少しずつ、料金を上げていった。

地上波テレビから声がかかるようになったのは、プロ宣言してから5年くらい経ってから。

本の仕事が舞い込んだのは、8年くらい。

企業顧問のオファーが来たのは、10年くらい。

この15年、華々しいステップアップがあったわけではない。

ゆっくりと、じわじわと、積み上げてきた。

普通の人生が、占い師を、作った。

占いを、ドラマチックな出自でやる人もいます。

それは、それで、すごい。

でも、私は、普通の人生をしっかり生きてきた上で、占い師になった。

普通の家庭、普通の学校、普通の職業、普通の人間関係、普通の恋愛、普通の失敗。

普通のすべてを、一通り経験したからこそ、鑑定室に来るお客様の、普通の悩みを、普通の目線で、理解できる。

特別な背景を持たないことが、私の、大きな武器です。

お客様は、「この先生、少し前までは、私と同じところに立っていた人」と感じる。

その感覚が、信頼を作ります。

占い師になる前の15年が、占い師としての15年を支えている。

占い師歴15年。

でも、その15年を支えているのは、占い師になる前の、普通の15年、20年です。

学生時代に迷ったこと。社会人1年目の挫折。20代の失恋。職場の人間関係。家族の問題。

これらの、地に足のついた経験が、鑑定の言葉に、重みを与えている。

占いを学ぶ前に、まず、人生を、普通に生きてほしい、と、弟子志望の若い人に、いつも言います。

占いのテクニックは、本と訓練で、1〜2年で、身につきます。

でも、人間への理解は、自分の人生を、実際に、生ききった分しか、増えません。

これから、少しずつ、書いていきます。

占い師になる前の私のことを、これから、少しずつ、このブログでも、書いていこうと思います。

占い師としての語りだけでは、私の全部は、出ない。

普通の少女だった頃、20代のヘアメイク修業時代、26歳で初めて失恋した夜、お金に困った時期、家族と離れた季節。

そういう話も、折に触れて、書きます。

誰にも言ったことがなかったことを、この書斎で、少しずつ、灯りの下に、並べていく。

そうすると、私のなかの、占い師ではない部分も、読者の方に、見えてくるかもしれません。

占い師は、特別な人間ではない、普通の人間だ、ということも、伝わるかもしれません。

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