友達が減っていく、という静かな豊かさ。

30代になってから、友達が、少しずつ、減っている。

嫌われたわけではない。喧嘩をしたわけでもない。

ただ、自然に、連絡が途絶えていく。

これを、寂しい、と思っていた時期もあった。

でも、今は、違う。

友達が減っていくことを、静かに、豊かだと、感じている。

目次

20代の、友達の数。

20代の頃、私のスマホには、たくさんの友達の連絡先が入っていた。

同級生、仕事で知り合った人、趣味のサークルで一緒だった人、飲み会で盛り上がった人、旅先で知り合った人。

誕生日には、たくさんのお祝いメッセージが届く。

週末の予定は、だいたい、誰かの予定と重なっている。

人間関係の広さは、成功の指標だと、どこかで信じていた。

たくさん友達がいる自分は、きっと、いい人生を送っている、と。

自然に、減りはじめた。

30代に入って、友達は、勝手に減りはじめた。

きっかけは、いろいろ。

結婚した友人は、家庭の時間を優先するようになる。
子育て中の友人は、夜の時間が取れなくなる。
キャリアチェンジした友人は、別業界に移って話が合わなくなる。
遠くに引っ越した友人は、物理的に会えなくなる。

全部、誰も悪くない。

ただ、それぞれが、それぞれの生活を、真剣に生きている結果。

でも、20代の頃の「たくさんの友達がいる自分」に、しがみついていた私は、最初、これに戸惑った。

友達が減っていく=自分の価値が、下がっていく?

そう、錯覚した時期がある。

残った人の、濃さ。

減っていく時期を過ぎると、ある一定のところで、連絡が続く人が、絞られてくる。

その「残った人たち」が、驚くほど、濃い。

半年連絡を取らなくても、再会した瞬間、時間が戻る。
こちらが大変な時期に、何も言わずに、そばにいる。
自慢話でも愚痴でも、嫉妬せず、侮蔑せず、聞いてくれる。
ときに厳しく、ときに優しく、こちらの成長を、本気で願ってくれる。

こういう関係が、残る。

20代の私は、たくさんの「薄い知り合い」に、囲まれていた。

30代の私は、数人の「濃い友人」に、抱かれている。

どちらが豊かか、と問われれば、迷わず、後者と、答える。

会わない時間が、関係を育てる。

本当に大事な友人とは、会う頻度が、少ない。

月に1回でもなく、年に2回くらい。

その代わり、会うときは、濃い。

半年分の出来事を、4〜5時間かけて、話す。お互いに、聞く。

会わない6ヶ月の間に、お互いの人生は、勝手に、次の章に進んでいる。

それを、お互いに尊重している関係。

頻繁に会う必要のある関係は、実は、不安定な関係、という説もある。

会わないと消えてしまう関係は、会えない時期に、溶けていく。

会わなくても残る関係は、時間の試練を、越えている。

友達が減って、自分との時間が増えた。

友達の数が減ったぶん、私の時間は、明らかに、増えた。

週末に、ひとりで過ごす時間。

本を読んだり、料理をしたり、散歩をしたり、何もしなかったり。

この「自分とだけ過ごす時間」が、私の思考を、深くしてくれた。

20代の頃は、ずっと誰かと一緒で、自分の内側に、降りていく時間が、なかった。

常に、外側で、誰かの話を聞き、誰かの話に合わせ、誰かの反応をうかがっていた。

30代で、外側の人間関係が整理されたとき、私はようやく、自分の内側を、眺める時間を、手に入れた。

自分のことを、自分で、少しずつ、知っていく作業。

これがなかったら、今の私は、たぶん、ここにいない。

友達を、無理に、引き留めない。

連絡が途絶えた友人を、無理に、引き留めようとしない。

その人には、その人の、忙しさがある。

こちらから一度、連絡してみて、返事がなければ、それも、関係の形。

そのまま、静かに、退いていく。

退いた先で、もしかしたら、5年後、10年後に、ばったり再会して、また関係が始まるかもしれない。

その可能性を、静かに、待っている。

待っていると、意外と、戻ってくる人もいる。

無理に繋ぎとめなかった関係ほど、時間が経ってから、深く戻ってくる。

友達の数は、人生の豊かさじゃない。

30代、40代、50代と年を重ねるにつれて、「友達の数」を指標にするのは、やめたほうがいい。

代わりに、こう問うてほしい。

「私が、本当に困ったとき、夜中に電話していい人は、何人いる?」

その答えが、2人か3人いれば、あなたの人生は、豊か。

残りの300人の連絡先は、実は、あまり、関係ない。

「夜中に電話していい人」を、何人か、ちゃんと持っている。

それだけで、人生は、十分に、豊か。

減ることを、恐れない。

友達が減っていくのは、あなたが、整理されている証拠。

あなた自身が、成熟していく過程で、不要な関係が、自然に剥がれていく。

それは、寂しいことでも、悲しいことでもなく、あなたの人生が、次のステージに入ったサイン。

減った分、あなたには、新しい人や、深い時間や、自分自身への静けさが、やってくる。

30代になって、いちばんよかったことの一つは、これを、誇れるようになったことです。

「友達、少ないんです」と、笑って言える大人の顔を、持っている人が、いちばんかっこいい。

目次