大げさに聞こえるかもしれない。でも、これは本当のこと。
人の印象の70%は、顔の上半分で決まると言われている。そして顔の上半分の印象を最も左右するのが、前髪だ。
おでこを出すか、隠すか。流すか、下ろすか。たったそれだけのことで、同じ人間がまったく別の印象になる。
サロンで「イメチェンしたい」と来るお客様の8割に、私はまず前髪の提案をする。髪色を変えなくても、長さを変えなくても、前髪だけで人は変われるから。
ある日、離婚調停中だという女性が来た。「自分に自信がないんです」と、うつむいたまま言った。
彼女の前髪は、目にかかるくらい長く伸びていた。まるで、世界を見たくないかのように。
「前髪、上げてみませんか」と聞いた。少しだけ抵抗があったけれど、最終的にうなずいてくれた。
前髪をかき上げて、おでこを出して、眉を整えた。それだけ。カラーもカットもほとんどしていない。
鏡を見た彼女は、3秒くらい固まって、それから泣いた。
「……私、こんな顔してたんですね」
前髪を変えても、人生の問題は解決しない。離婚調停は続くし、不安は消えない。
でも、鏡の中の自分が少しだけ好きになれたら。その「少しだけ」が、明日の一歩を軽くすることがある。
髪型を変えるのに、勇気はいらない。必要なのは、ほんの少しの「変わってもいいかな」という許可だけだ。
