ファンデーションは「隠す」ためにあるんじゃない。

よく聞かれる。「シミを隠すにはどのファンデがいいですか?」と。

その質問が来るたびに、少しだけ胸が痛む。

ファンデーションの本来の役割は、肌の色ムラを整えて、光の反射を均一にすること。つまり「隠す」のではなく「整える」道具だ。

厚く塗れば塗るほど、肌は「作り物」になる。動いたときにヨレる。笑ったときにひび割れる。それは、化粧ではなく仮面だ。

銀座のサロンにいた頃、50代のお客様がこう言った。「若く見えるようにしてください」と。

私はそのとき、あえてファンデーションを薄くした。コンシーラーも最小限。そのかわり、ハイライトの位置を丁寧に計算した。

仕上がりを見たお客様は「……若くはなってないわね」と笑った。そのあとに、「でも、きれい」と言ってくれた。

「若く見える」と「きれいに見える」は、似ているようでまったく違う。

ファンデーションは隠すためにあるんじゃない。その人の肌が一番きれいに見える状態をつくるためにある。

塗るものを選ぶ前に、まず鏡を見てほしい。自分の肌がどんな光を持っているのか。それを知ることが、メイクの第一歩だから。

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