15年、カードを引き続けてきた。
その中で、いちばん多かったパターンは何だと思う?
「嘘の質問」。
カードは嘘をつけない。引かれたカードは、そのままの意味で出てくる。でも、そこに座っている人は、平気で嘘をつく。
自分に、占い師に、宇宙に。
「本当は、もう知っている。」
「彼のことを知りたいんです。」
本当はもう知っている。別れるしかないこと。
「仕事運を見てほしいんです。」
本当は転職したいと決めている。ただ、背中を押してほしいだけ。
「結婚できるか気になって。」
本当はその人と結婚したくないと気づいている。
こういう鑑定を、一日に何件も受けてきた。口で言ってる質問と、心で聞きたい質問が、ズレている人。そのズレに、当人は気づいていない。
気づいていない、ということにしたいだけ。
3分、黙って顔を見る。
私は鑑定を始める前に、いつも3分だけ時間をもらう。何もしゃべらず、相手の顔を見る。
その3分で、だいたい分かる。
この人は、本当は自分の答えを知っている人だな。
この人は、認めたくないだけなんだな。
この人は、カードに背中を押してほしい人なんだな。
それからカードを引く。
カードは、相手の「本当の質問」に答えてくる。
「彼との未来はどうですか?」と口では聞かれていても、カードには「あなたが本当は聞きたいこと」が映る。それはしばしば、「いつ別れるのがいいか」だったりする。
こういう時、私はそれをそのまま口に出さない。
「彼との関係は、少し時間を置いた方が良さそうです。」
そうとだけ言う。
相手は必ず一瞬、黙る。その沈黙で、私は確信する。やっぱりこの人は分かっていた、と。
「当てて欲しい」ではなく「言ってほしい」。
占いに来る多くの人が、「当てて欲しい」のではない。
「言ってほしい」。
自分で言葉にしたくない本音を、他人の口から、しかも神秘的な媒介を通して聞きたい。その相手として、占い師は都合がいい。否定されても、他人事にできるから。
だから占いは成り立つ。
もっと言うと。
本当はほとんどの人が、自分の答えをもう持っている。
「どうすればいいですか?」と聞く人の9割は、もう答えを出している。あとは背中を押してくれる誰かを探しているだけ。
背中を押してほしい気持ちは、悪いことじゃない。誰かに言葉にしてもらうことで、初めて腹を括れることがある。私はそれをよく知っている。
だから私は押す。
でも、カードに嘘をつく人には、優しくは押さない。
嘘を置いていける場所。
「カードは、あなたが口にした質問じゃなくて、あなたが本当に聞きたい質問に答えていますよ。」
そう言って、少しだけ居心地の悪い空気を作る。
こうすると、相手はハッとする。そして、自分で自分の本音を取り出し始める。
15年、この仕事をしてきて、いちばん好きな瞬間はここにある。
カードに嘘をついていた人が、嘘をつくのをやめる瞬間。
その後、その人の人生は、必ず動く。
カードは嘘をつかない。あなたは嘘をつく。
でも。
カードの前でだけは、その嘘、置いていってもいい。
私が預かる。
