デッキを50枚持っている占い師の、選び方の話。

タロット占い師をしていると、よく聞かれる質問があります。

「デッキ、何個くらい持っているんですか?」

正直に答えます。50枚以上です。

たぶん、もっとあります。整理しきれていないので、正確な数字は言えません。古いコレクションもあれば、現在鑑定で使っているもの、お守りとして飾っているもの、いろいろ混ざっています。

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なぜ、そんなに必要なのか。

「そんなに違うんですか?」と聞かれることがあります。

違います。まったく違います。

同じライダー版でも、イラストレーターが違えば、カードが持っている気配はまるで別物。

色づかいの違い。線の強さ。人物の表情。光の方向。使われている紙質。箱の匂い。これらすべてが、カードの「読ませ方」に影響します。

特に敏感になるのは、鑑定するテーマとの相性です。

テーマによって、デッキを変えます。

例えば。

恋愛の鑑定をするときは、柔らかい色合いの絵柄のデッキを選びます。ロマンティックすぎる可愛らしい絵柄ではなくて、大人の恋の陰影が描かれているもの。

仕事や経営の相談には、輪郭のはっきりした、古典的な描線のデッキを使います。迷いなく、構造が見えてくるようなもの。

人生の岐路に立っているような重い相談のときは、色数が少なくて、静かな絵柄のデッキを選びます。あまりにも華やかなカードは、大きな決断には、向きません。

霊的なテーマ、亡くなった方の話、夢の話のときは、マイナーアルカナの絵柄まで幻想的なデッキを出します。

この選び分けが、読みの精度を大きく左右します。

その日の体調と、デッキの相性。

もうひとつ、デッキを選ぶ基準があります。

占い師側の、その日のコンディションです。

体調が万全で、エネルギーが高い日は、情報量の多いデッキが読める。細部まで描き込まれたイラスト、複雑な象徴、神話をモチーフにしたデッキなど。

疲れているときに情報量の多いデッキを開くと、カードが重く感じる。情報を受け止めきれない。

逆に、少し疲れている日は、シンプルな線画のデッキのほうが、むしろ集中できる。

デッキを選ぶという作業は、その日の自分自身を診断することでもあります。

クライアントとの相性も、見ています。

対面鑑定の場合、クライアントが部屋に入ってきた瞬間に、私はデッキを決めます。

服装、髪型、声のトーン、歩き方、座り方。こちらに向ける視線の柔らかさ、硬さ。

そのすべてを数秒で受け取って、「この人には、このデッキ」と、手が動きます。

言語化は難しいのですが、たとえば、繊細で傷つきやすそうな方に、インパクトの強い絵柄のデッキを出すと、カードに威圧されて、心が閉じてしまうことがある。

逆に、理論的で懐疑的な方には、曖昧な水彩のデッキは合わない。もっと構造のはっきりしたデッキのほうが、相手の理性を納得させやすい。

これは、技術の話というより、相手への敬意の話です。

これから選ぶ人への、簡単なコツ。

最後に、これからデッキを選ぼうとしている方へ、少しだけ実用的な話を。

選び方の基準はシンプルです。

①手に取ったとき、少しだけ脈拍が上がる感じがあるか。
②裏面のデザインが、長く見ていても飽きないか。
③裸の状態のデッキ(ビニール未開封ではなく、開けてみた状態)で、全体に触れたときに、冷たさよりも温かみを感じるか。

この3つを満たすデッキは、あなたにとって、長く付き合えるデッキです。

逆に、「なんとなく、選ぶ勇気が出ない」デッキは、買わないほうがいい。タロットは、迷いながら迎えたカードには、最後まで優しくしてくれないことが多い。

デッキの数は、占い師の才能ではない。

50枚以上持っている、という話をすると、たいてい「すごいですね」と言われます。

でも、これは、才能の話ではありません。

時間をかけて、その日その日の自分と、その日その日のお客様に合うデッキを探してきた、というだけ。

50枚あるのは、50通りの「私」を信頼している、ということでもあります。

あなたが今日、カードを手に取るなら。

そのカードを、どのくらい信頼できますか?

信頼できるのなら、それが、あなたの1枚目です。

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